こんにちは!今回は、高齢者に多い疾患である大腿骨頸部骨折のリハビリについて記載していきます!
※ガイドラインや文献紹介を元にまとめていきますので、専門職向けの記事になります。
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・大腿骨頸部骨折に対するリハビリテーションについて、簡易的に理解できる。
目次
・リハビリテーションの有効性は?(ガイドラインより)
▶︎術前リハビリ
▶︎術後リハビリ
▶︎退院後リハビリ
▶︎クリニカルパスの有効性
・その他文献紹介
・まとめ
・リハビリテーションの有効性は?(ガイドラインより)
▶︎さっそくですが、リハビリテーションの有効性についてガイドラインをみていきます!!
以下ガイドラインより一部抜粋↓
【術前リハビリについて】
▶︎術前から上肢機能訓練や健側下肢機能訓練,また患肢足関節機能訓練を行うことが有用であり,呼吸理学療法,口腔内ケアも行うことが望ましい.
↑術前リハビリは、どうしても疼痛が強くて積極的には行いにくいです。しかし、ガイドライン上は効果がありそうなので、可能な患者さんについては出来る範囲で四肢のトレーニングを行った方が良さそうですね!
↓具体的なプログラムについては他文献よりピックアップしました。
【頸部骨折 術前トレーニング】
▶︎ベッド上での筋力維持は,上肢の筋力訓練および下肢 の等尺性運動が主となる。足関節の自動運動は,下肢深 部静脈血栓症の予防にもなるので,1セット100回の底背屈を1日3~4セット行わせる。(文献①より)
【術後リハビリについて】
▶︎術後は翌日から座位をとらせ,早期から起立・歩行を目指して下肢筋力強化訓練および可動域訓練を開始する.歩行訓練は平行棒,歩行器,松葉杖,T字杖歩行と進めることが多い.▶︎
▶︎特別なリハビリテーションメニュー(患者教育,強力な筋力訓練,歩行指導,作業療法,電気筋刺激など)が試みられ,それぞれの報告では一部のアウトカムにおいて有効性が認められている.しかしsystematic reviewではその研究デザインやアウトカム設定に問題があると指摘され,エビデンスとしては一定の結論に至っていないので,確立したリハビリテーションメニューはない.
↑基本的には早期離床を促し、徐々に歩行レベルを上げていくというのが一般的ですが、特別なプログラムに対するエビデンスは現在ないみたいですね!
ただ、理学療法士以外の専門職が並行して介入することについては、一定のエビデンスがありそうです↓
【頸部骨折 作業療法】
65歳以上の大腿骨近位部骨折患者100例に対して,術後5日以降に作業療法(ADL訓練として離床,整容,着衣,トイレ,入浴)を毎日45〜60分個別訓練を行う介入群50例と,通常の術後療法を行う対照群50例とRCTにて比較したところ,作業療法群で早期にADLの回復と,家庭復帰をもたらした(F2F00127, EV level II-1).
【頸部骨折 認知症】
術後理学療法の効果についてのsystematic reviewでは,最も高いエビデンスレベルとして軽度・中等度認知症を有する患者に対してはmultidisciplinary rehabilitationが有効との報告がある(F2F02376, EV level I-2).
※multidisciplinary rehabilitation(集学的リハビリテーション,多角的リハビリテーション)
▶︎各専門職種の協力の下に行うリハビリテーション。
【退院後リハビリ】
▶︎退院後にリハビリを継続することについては、一定の有効性が示されています↓
【Grade B】
退院後のリハビリテーションの継続は有効である.
▶︎退院後家庭における理学療法,作業療法,荷重訓練,筋力訓練のプログラムが身体機能やQOLの向上に有効である(EV level II-1).
さらに、術後・退院後のリハビリについては以下のような記載もあります。
【Grade B】
術後最低6ヵ月程度は,リハビリテーションを行うべきである.
↑回復期リハビリテーション病棟に期限いっぱい入院しても3ヶ月程度なので、それ以後のリハビリも3ヶ月以上な何かしら継続した方が良いということですね!
▶︎これを踏まえると、
・自宅でのセルフトレーニングの指導
・デイケア、デイサービスでのリハビリ
・訪問リハビリ
・外来リハビリ
↑頸部骨折においてはこれらもかなり重要であるということですね!!
【頸部骨折 クリニカルパスの有効性】
【Grade B】
クリニカルパスは受傷前ADLが高い症例に対しては入院期間の短縮と術後合併症の防止に有効である.
▶︎クリニカルパスに基づいて全症例に加速的リハビリテーションを行っても,有効ではなかったとする,中等度レベルのエビデンスがあり,加速的リハビリテーションは全症例に行うことは勧めない.
↑とのことでした。様々な疾患において、各施設でクリニカルパスが作成されていますが、頸部骨折については「もともと元気な人」という制限付きだと考えた方が良さそうですね!
・その他文献紹介
【頸部骨折 ステージ分類】
Stage Iは,外側陥入型で安定度が高い。ただ,レントゲンでの大腿骨頸部軸射像で骨頭が後方に傾いている場合は不安定なので、転位が進みやすい。
▶︎Stage II は陥入型完全骨折で,Stage I についで安定度が高い。
▶︎Stage III は頸部後方の靭帯組織(Weitbrecht 支帯)の連続性が保たれているので,場合に よっては牽引しながらの外転内旋により良好な整復位に 戻すことが可能である。
▶︎Stage IV の場合は,連続性が完全に絶たれているため,整復も困難であるし,骨癒合の期 待も少なく,骨頭への血流が途絶えているため将来の骨 頭壊死の可能性も高い。
※GAI:Garden alignment index
▶︎正面像および側面像で計測され,整復状態が良好であれば正面・側面像ともに160~180°の間にある。
※Weitbrecht 支帯(バイトブレヒト)
▶︎大腿骨頸部の下後方に存在する強靭な被膜
【転子部骨折 荷重量】
▶︎粉砕が強く,特に小転子側の支持がない場合は,筋力や荷重により短縮転位を来たしやすい。
▶︎CHSにしてもガンマネイルにしても,カットアウト(手術後に近位骨片の転位により,スクリューの先端が骨頭を突き破り関節内に突出すること)を避けるために、スクリューとチューブプレート,あるいはスクリューと髄内釘の間で,スライディングする構造になっている。
▶︎このため,手術直後から荷重をはじめると,容易に近位骨片が遠位骨片の近位断端に入り込みながら,遠位骨片は内方化していき,整復位が崩れていく。当然,骨折部が動くために疼痛が長引く。こういった場合は,荷重を少し遅らせてレントゲンの変化を見ながら,徐々に荷重
を増やしていく。実際には,1週ごとにレントゲンをとり,転位やスライディングの有無や程度を見ながら荷重を進めていく。どんな場合でもすぐに全荷重,というやり方は好ましくない。
【転子下骨折 骨癒合】
海綿骨部での骨折で はないため,通常の骨幹部骨折と同様に骨癒合が遅れることを念頭におく。
【頸部骨折 術後トレーニング】
▶︎特に腸腰筋,大腿四頭筋,中殿筋の筋力は重要であ るので,積極意的にSLR(Straight Leg Raising)および自 動外転運動を行わせる。また,術前の待機期間中から, 大腿四頭筋のセッティングも多数回させるようにする。
以下ガイドラインより↓
80例の患者で,標準的理学療法の対照群40例と,標準的理学療法+四頭筋強化訓練(11session training)の介入群40例の2群でRCTを行ったところ,6週後の比較介入群において運動機能[95%CI 2.5(1.1〜3.8)]が有意に優れ,下肢筋力(p ≦0.001),Barthel index(p≦0.05)も優れていた.16週後では運動機能は有意[95%CI 1.9(0.4〜3.4)]に優れ,QOLが有意に高かった(p =0.0185).死亡率には差はなかった(F1F10028, EV level II-1)
75歳以上の女性患者24例について,RCTを行って大腿四頭筋の電気刺激を術後1週間から1日3時間で6週間行う介入群12名と対照群12名を比較したところ,介入群において術後7週から13週で歩行速度の有意な改善(-0.13m/s,95%CI-0.23〜-0.01)を認めた(F2F00597, EV level II-1).
【頸部骨折 荷重時期】
(頸部骨折 人工骨頭)
▶︎セメントを用いない 場合は,大腿骨ステムの表面コーティング部分への骨組 織移入による固着が進むまでの3週から6週の間,全荷重 を待つ場合もある。
(頸部骨折 骨接合術)
▶︎骨頭の骨粗鬆化の程度,骨折形態 や術中所見から推測される安定性などを考慮して,1週か ら3週間程度全荷重を遅らせることがある。若年者の交通 事故や転落事故での頸部骨折の場合は全荷重まで6週間 かける。
(転子部骨折)
▶︎レントゲン大腿骨頸部 軸射像で,骨折部の前方の皮質が合っている場合は,再 転位が少ない。
▶︎Jensen分類のタイプ4,5でも同様に整復位 が良好な場合は,直後からの全荷重が可能と考えられる が,徐々に転位してくる場合があり,1週間後のレントゲ ンを見て徐々に荷重開始する場合が多い。骨折部近傍で粉砕があり骨性の支持が期待できない場合,整復不良の場合は少し遅れた荷重開始とした方が安全である
【頸部骨折 術後疼痛】
▶︎手術前および術後の安静期間を経て,荷重や歩行訓練が進んでくる時期に,内転筋,大腿直筋,大腿筋膜張筋や腸脛靭帯にかけての筋炎や腱炎による痛みが起きやすい
【人工骨頭 可動域訓練】
▶︎人工骨頭置換術で脚長が長くなった場合には,筋肉や関節包が過伸張されると,それ自体が屈曲拘縮の原因となる。筋肉の長さは数週間のうちに徐々に長くなってくることが期待できるので,股関節伸展方向や外転方向へのストレッチを続けると約3週程度で可動域が改善してくる。
後方アプローチでの人工骨頭置 換術で脚長が長くなる場合は,外側前方の関節包が突っ張り外転屈曲内旋拘縮になりやすい。歩行時に伸展位を 取りにくく,ワイドベースで内股になってしまう
【術後 DVT】
手術後に下肢の腫脹が徐々に進行してくる時は,下肢 深部静脈血栓症を考慮する。Homans徴候や下腿内側の叩 打痛や把握痛の有無を確かめ,静脈性の疼痛がある場合 は主治医に報告する。下肢深部静脈血栓症が疑われて肺 塞栓症を起こす心配がある場合や,ウロキナーゼによる 線溶療法が行われる期間中は,リハを中止する。
Homans徴候:仰臥位で足を伸ばし、足関節を背屈させると腓腹筋に痛みを感じる徴候。下肢深部静脈血栓症の際に高率に見られますが、健常者でも認めることがあるため特異度はさほど高いとは言えない。
①引用:石橋:大腿骨頸部骨折のリハビリテーション.理学療法科学20(3):227〜233,2005
【転子部骨折 疼痛遷延】
▶︎TF (大腿骨転子部骨折)術後の不安定型や術 後 LSS (ラグスクリュースライディング)量の拡大は,術後の髄内整復位や骨膜刺激,内側骨皮質の骨 癒合不全,後壁損傷による股関節周囲筋群の安定性低下,ラグスクリューによる筋膜刺激,頚部短縮からの外転筋効率低下による歩行 時側方動揺などが歩行時の疼痛に影響を及ぼすことが考えられる。
②引用:宮本ら:大腿骨転子部骨折術後における退院時の歩行時痛に影 響を及ぼす因子の検討. 第53回日本理学療法学術大会 抄録集2018
・まとめ
▶︎具体的な手技などについては、現在のところエビデンスレベルは高くないみたいですね。
▶︎ただ、ベーシックなリハビリを進めていくことついては、術後6ヶ月くらいまでは有用性がありそうです。
▶︎元気な患者さんはクリニカルパスの流れにそって加速的にリハビリを進めていく方が良いみたいですが、その他の合併症のリスクが高いような方については注意が必要ですね!!
▶︎またガイドラインが更新されたり、良い文献が有れば追加していく予定ですので、よろしくお願いします。
今回はこれで終わります。最後までお読み頂きありがとうございました!😁
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