今回は、足部評価の1つである内側縦アーチ高率(MLA)について記載していきます。
内側縦アーチは荷重負荷により容易に低下しやすいため、足部評価の必須項目ですね。
足部のアライメント評価はその他評価も合わせて複合的に評価する方が妥当性が高くなりますので、お時間があればこちらも合わせてお読みください↓
【足部評価まとめ】
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●この記事の信頼性
▶︎記事を書いている私は、運動の専門家である理学療法士(国家資格:7年目)であり、解剖学・運動学・生理学を基本とした知識があります。
▶︎さらに足と靴の専門機関にて2年間学んできましたので、足・靴に対する知識は豊富です。実際の靴作りも行っていたので、構造的なこともお伝えできます。
●このブログをみて得られるメリット
・内側縦アーチ高率(MLA)の評価方法が分かる
・評価の結果の解釈と対応策の一部が分かる
目次
・内側縦アーチ高率(MLA)とは?
・評価方法
・MLAの正常値・異常値
・MLAが異常であれば、どうなるのか?
・MLAが異常な際の対応策
・まとめ
・内側縦アーチ高率(MLA)とは?
▶︎立位における内側縦アーチの高さを測定する際の評価となります。
▶︎床から舟状骨粗面の高さを測定し、それを足長で割った値(✖️100)がアーチ高率になります。
▶︎その他検査との違いとしては
・その他肢位での測定はなく、立位での測定値のみが分かる
・舟状骨の高さ以外の足部アライメントは評価できない
といったところでしょうか。
いずれにしても、これだけでは足部アライメント評価としては不十分ですが、多数文献も出ている為、有用な検査であることは間違いありません。
・評価方法
▶︎具体的な算出方法としては、
アーチ高率(%)=舟状骨粗面の足底面からの高さ(cm)/足長(cm)×100で算出される。
▶︎測定肢位は、
一般的には自然立位にて測定する場合が多いです。
個人的には、その他の足部評価を同じ条件で測定していれば、特に問題ないのかなと思います。
私はLHAなどと一緒に測定する際に、
①▶︎足の第2趾を正面に、左右の踵部を20センチ程度開けるようにして平行に立つ。
といったように肢位をしっかり同定した場合と、
②足ぶみを軽く行った後の自然立位
↑この2つのパターンで測定する場合が多いです。
肢位を同定しているパターンではその他検査と合わせて検討する際に誤差が少なく、自然立位ではアプローチする際に直接的に効果が出やすいかなと考えているので、2つとるようにしています。
【MLAの問題点】
▶︎アーチ高率では体表から舟状骨を触診するには検者の熟練が必要であるということ。
▶︎足趾変形がある場合に足長をそのまま用いてよいのかといった議論がある
といったことがらが問題とされている。
・MLAの正常値・異常値
▶︎測定結果が11%以下 L群(低い)
11〜15% M群(普通)
15%以上 H群(高い)
とされています。
※鳴海らの分類より
▶︎特に、MLAが低いといわゆる扁平足気味ということになるので、様々な弊害が起こります。
・MLAが異常であれば、どうなるのか?
ハイアーチである場合の文献はあまり無さそうでしたが、扁平足気味である場合の状態について、いくつか述べていきます。
↓以下、文献の一部を参考にいくつか挙げていきます。
・歩行時の母趾外転筋の活動について
▶︎正常では立脚機の60%で活動開始→アーチ高率が低いと立脚期全般に活動。
つまり、アーチを保持するために補助筋が過度に活動したり、下肢アライメント異常から起こる不安定性に対応するために活動していると考えられる。
▶︎アーチ高率の低いケースでは立脚中期以降、母趾球に荷重が移行した際、heel-in、前足部の外転、足部アー チの低下などによる歩行効率の低下を極力避ける機序が働き、母趾外転筋が過剰に活動するものと洞察される。
参考文献
藤田ら:内側縦アーチ高率の違いによる歩行時の母趾外転筋について
藤田ら:内側縦アーチ高率の違いによる歩行時の筋活動様式の違い
・緩衝能について
走行時▶︎低アーチだと緩衝能が低い
Ogonら,1999
ジャンプ動作▶︎MLAの関連は低い
隅田,2002
※走行時に関連したのは、ハイアーチだとウインドラスメカニズムがうまく働くためか
▶︎走るときに衝撃緩衝能力が低くなる。
・片脚立位バランスについて
▶︎総軌跡長においては増加
▶︎実効値面積においては扁平群で有意に減少した。
▶︎扁平群は健常群に比べて構造的に脆弱であるため,大きな重心動揺が生じる前に早期に修正しようとし,特 に X 軸方向において速く細かい COP 制御が顕著となったと考える
・片脚立位時の筋活動について
▶︎前脛骨筋,長腓骨筋,腓腹筋外側頭,腓腹筋内側頭の4筋は、扁平足とコントロール群で変化なし
▶︎ 片脚立位における内側縦アーチの安定性には,受動的構造に加え,足部内在筋や下腿深層筋による能動的構造が関 与しているのではないかと考える。
参考文献
枠田ら:内側縦アーチ高率が重心動揺および下腿筋活動に及ぼす影響
▶︎いくつかの文献を合わせて考えると、恐らく足内在筋の過活動は起こっていそうです。
ただ、大きな2関節筋等には著名な活動の変化はないみたいですね。
それらにより、立位バランスや緩衝能に影響が出るということでしょうか。
▶︎いずれにしても、動作にどれほど影響が出ているのかという部分が大切かなと思いますので、他関節との影響も考慮した上で、アプローチしていくべきかを判断する必要がありそうです。
・MLAが異常な際の対応策
▶︎主には
①運動療法
②足底板療法
③手術療法
が挙げられます。
①運動療法
▶︎内側アーチを形成する筋肉のトレーニングを実施します。
一般的にはタオルギャザーが有名ですが、近年では荷重下でのEXも注目されています。
そのため、今回は足趾・踵荷重起立台というものの効果について簡単に文献の記載を挙げていきます。
※足趾トレーニング踵にのみ荷重がかかるように、その2点を少し上げた台の上に立つエクササイズ。
↓以下文献
【足趾機能トレーニング】
▶︎タオルギャザーなどが一般的に行われているが,近 年では荷重下で様々な姿勢制御課題を実施すること が,足趾機能改善により効果的であるとの報告もされている
・足趾・踵荷重起立台の効果
嶋 田ら:足指・踵荷重起立台を使用した足指踵荷 重立位時の活動電位を表面筋電図で測定した結果.短母趾屈筋をはじめ下肢筋群の活動電位が有意に増加した。
佐野ら:足趾踵荷重立位 は既存の足趾トレーニングと比較し足底内在筋の筋 活動を誘発できる運動課題であり,即時的に足趾把持筋力を向上させる
▶︎3 週間の実 施によって Functional Reach Test が向上したこと から,前方向への動的姿勢制御機能を向上させる運 動であると報告した.
▶︎舟状骨高が増加することを確認することができた.
▶︎これは足趾踵荷重立位運動を実施することで,足趾屈筋群や後脛骨 筋,足底筋膜の筋活動が増大し,舟状骨を頭側に引き上げたと考えられる
【足趾踵荷重訓練の効果】
▶︎足指把持力トレーニングにより 足底の固有感覚が賦活されたことによる姿勢制御能力の向上(動的バランス能力↑)
【足趾踵荷重訓練の効果】
▶︎足圧中心位置の前方移動距離と足指を鉛直下方へ圧迫する 力との間には正の相関関係が認められる。
▶︎足趾踵荷重立位運動の足指 への直接的効果により,足指を鉛直下方へ圧迫把持する能力が向上したことにより,動的な平衡機能 が向上したことが考えられる.
【足趾踵荷重訓練】
▶︎静的重心制御機能に向上が認められなかった要因
▶︎健常成人においては, そもそも静止時立位時の重心動揺は少なく,介入効 果が認められなかった。
参考文献
嶋田ら:足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動が足部形態に 与える影響 —扁平足症例に対しての予備的研究—
②足底板療法
▶︎次は、足底板療法についてです。
↓以下文献
【内側アーチパットの装着よる変化】
▶︎パッドを高くするほど、アーチ高は高くなり、LHA、踵骨外反傾斜角が有意に小さくなるという結果が得られ、これは、内側縦アーチパッドにより舟状骨が持ち上げられることで踵舟関節を 介して踵骨を回外させたためであると考えられる。
▶︎アーチ高が高くなると距骨下関節を介して下腿外 旋が生じ、Q-angleも変化すると考えられたが、Q-angleに有意差がみられなかった。
▶︎健常者ではアーチ高の変化のみでは下腿回旋はわずかであり、Q-angleの変化には及ばなかった?
参考文献
橋本:舟状骨高と足部・膝関節アライメントとの関係について
③手術療法
▶︎手術療法については専門外のためくわしく記載出来ませんが、calcaneo-stop法という距骨下関節をボルトで固定し制動する方法があるそうです。
▶︎気になる方がおられましたら、また調べてみてください。
・まとめ
▶︎内側縦アーチ高率の測定のみでは、その他関節のアライメントがわからないため、その他の評価と複合して考える必要があります。
▶︎しかし、内側縦アーチ高率の高低により機能レベルや活動レベルでの変化が出現するため、その他関節等の影響も加味しながらアプローチしていくのが良いと思います。
▶︎アプローチについては様々方法がありますが、荷重下で足趾筋群の収縮を図るのは有用ではないかと個人的に考えます。
今回はこれで終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。😁
※その他の評価についてはこちらを参照下さい↓
【足部評価まとめ】
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