今回は、下腿傾斜角についてまとめていきます。
下腿傾斜角とは、文字通り下腿が傾斜している角度のことをいいます。
下腿の傾斜角度は、隣接している足部や膝とも大きく関係しているので、足部や膝の疾患のクライアントの治療を行う方は是非ご覧になって下さい!!
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●この記事の信頼性
▶︎記事を書いている私は、運動の専門家である理学療法士(国家資格:7年目)であり、解剖学・運動学・生理学を基本とした知識があります。
▶︎さらに足と靴の専門機関にて2年間学んできましたので、足・靴に対する知識は豊富です。実際の靴作りも行っていたので、構造的なこともお伝えできます。
●このブログをみて得られるメリット
・下腿傾斜角の測定方法が分かる
・下腿傾斜角がその他関節に及ぼす影響を文献でまとめて見れる
目次
・下腿傾斜角とは❓
・文献まとめ
・まとめ
・下腿傾斜角とは❓
▶︎言葉のとおり、『下腿が傾斜している角度』ですね。
下腿の傾斜は、内外側・前後方向いずれにも言えますので、
前に傾斜していても下腿傾斜角
外側に傾斜していても下腿傾斜角
といいます。
そのため、文献等を読む際は少し注意がいりますね。(文脈や測定方向を考慮したら、まず間違えないとは思いますが。笑)
▶︎ちなみに前額面上からの観察では、
・下腿長軸
・床への垂直線
▶︎矢状面上からの観察では
・腓骨への垂直線
・床面と平行な線
これらが基準の軸になります。
ではさっそく、下腿傾斜角について記載されている文献をまとめていきます。
・文献まとめ
※ややこしいので、前額面と矢状面で分けて記載します!
【前額面】
※略語について
▶︎LA(床 への垂直線と下腿長軸がなす角)
▶︎HA(床への垂直線と踵骨が なす角)
▶︎LHA(下腿長軸と踵骨がなす角)
▶︎MLA(床面と内外 果頂点を結ぶ線がなす角)
▶︎下腿長軸と内外果傾斜の相対的角度 として LMLA(下腿長軸への垂直線と内外果頂点を結ぶ線がな す角)
【LHAとLA】
▶︎LHA は距骨下関節に反映され、LA が増加するほど距 骨下関節が回内する傾向にあった。
▶︎したがって、LA 増加は HA ではなく距骨下関節に影響するものと考えられる。
▶︎LA 増加は MLA ではなく LMLA 減少を示した。
▶︎これらの関係から下腿傾斜 に対する後足部アライメントの評価は、床面に対する位置関係 ではなく下腿長軸に対する位置関係を評価する必要性を示して いる。
▶︎LA 増加に伴う LMLA 減少は距腿関節機能軸に影響を与 えると考えられる。
▶︎足関節・足部は 1 つの機能ユニットとして作 用し、下腿傾斜に伴う距腿関節機能軸変化は距骨下関節を介し 前足部へも波及する。
▶︎今回の結果から膝OA症例のLTと足部機 能障害に対し、距腿関節機能軸変化の影響が示唆された。
引用
加藤ら:下腿傾斜角と後足部アライメントの関係
(2007)
【膝OA とLA】
▶︎膝 OA 群について詳 細にみると grade4・5 では LA 増大による回内傾向が強いが、grade1 ~ 3 では回内外にばらつきがみ られた。
▶︎LMLA に関しては統計学的に有意な関係はなかったものの、健常群と膝 OA 群の grade1 ~ 3 では LA 増大による LMLA 減少つまり足関節軸傾斜の減少傾向と、grade4 ・ 5 では足関節軸傾斜の 増加傾向がみられ、この足関節軸傾斜の変化は距骨下関節を介し前足部へも影響を与えると考える。
▶︎また、内反変形に反映すると考えられる LA は、grade が進行するほど値が大きくなるとは限らない ことが確認された。
引用
加藤ら: 下腿傾斜角と後足部アライメントの関係(第 2 報) —変形性膝関節症症例と健常者との比較—(2008)
【LA 歩行】
▶︎下腿傾斜の経時的な運動は、外側方向への運動のピークを生じる時期により 3 タイプに分類できた
▶︎5 名は立脚後期 まで徐々に外側へ動きそれ以降急激に内側方向へ動くタイプ、3 名は外側への運動が立脚中期で止まり徐々に内側方向へ動 くタイプ、1 名は立脚初期に外側へピークあり
▶︎LHA については、一般的には回外で接地し、衝撃吸 収のために回内方向へ動き、離地で回外方向へ動くと言われているが、本研究でも同様の運動を確認できた。さらに回内方 向への運動のピークを生じる時期により 3 タイプに分類できた。
▶︎LA と LHA のピーク時期には統計学的な関係性は認められなかったものの、9 名中 8 名は LHA のピークは LA のピークに 先立って生じていた。▶︎このことから、立脚相の前半では下腿傾斜の運動よりも踵骨の運動の方が大きく関与していると考え られる。
▶︎また、下腿傾斜の外側方向の変化量と LHA の回内方向の変化量には正の相関関係が認められた。
▶︎これは下腿傾斜が 大きい時に足部を床面に保つためにより大きな LHA 回内の運動が生じていると考えられる。
▶︎膝 OA 症例の歩行では lateral thrust が立脚初期や後期に観察できたり、立脚相で回内が強く生じる症例や回内運動がほとんど起こらず回外位の症例がみられ、lateral thrustに関与すると考えられる下腿傾斜やLHAの運動が特徴的であると言える。
▶︎先行研究で報告したように、健常者の静的な立位アライメントにおいても LA と LHA 回内に同様な正の相関関係が認められ たが、今回の動的な歩行分析では運動パターンに差異があることが確認された。
引用
加藤ら:下腿傾斜角と後足部アライメントの関係(第 3 報)
̶健常成人の歩行における分析(2009)
【矢状面】
【立ち上がり 下腿傾斜角】
▶︎片脚立ち上がりテストにおいて,座面高 10 cm から の立ち上がりが可能であった対象は,座面高 20 cm か らの立ち上がりまで可能であった対象と比較し,下腿傾 斜角度および SLSD が有意に大きく,足関節柔軟性が 高く,静的バランスが優れていることが示唆された.
▶︎低い座面からの立ち 上がり動作では離殿時の重心移動速度は上下方向より前 後方向に大きいという報告 もあり,下腿傾斜角度 が小さいことで質量中心を支持基底面上に運ぶまでの仕 事量が増え,より多くの下肢筋力を要求されることが予想される.
▶︎よって下肢筋力には差がない対象であっても 足関節背屈方向への柔軟性低下が 10 cm 台からの立ち 上がり動作の可否に影響することが示唆された.
引用
高橋ら:若年サッカー選手における片脚立ち上がりテストに 関わる要因の検討(2018)
【中足骨パット 下腿傾斜角】
▶︎中足骨パット歩行は下腿傾斜角と膝関節屈曲角度の増加を生じさせることが示された.
▶︎歩行は 15% stance 付近にて立脚中 期へと移行し 50% stance 付近まで継続することが知られており,本研究の結果では,おおむね立脚中期での角度変化であった.
▶︎また,膝屈曲角度の変化はより早期に出現する傾向があった.角度変化を起こした理由として,支点の変化による「てこ の作用」が影響を及ぼしたと考えられた.
▶︎中足骨パットは,足長のおよそ中心にあるリスフラン関節よりも遠位に位置する.
▶︎パットによる支点がより遠位に存在することで前方への移動を制限し,後方に体重が残りやすくなる.
▶︎そのため足関節背屈 運動が起こり,下腿傾斜角と膝関節屈曲運動の増大へとつながったと考えられた.
▶︎楔状骨パットは、自然歩行との間に有意 な差は認められなかったが,中足骨パットとの関係においては有意に低下していた.
▶︎各被験者内での比較では,自然歩行よ り低値を示す例が多くみられ,楔状骨パットにて下腿傾斜角と膝関節角度が低下する可能性が考えられた.
引用
島田ら:中足骨と楔状骨レベルの横アーチに対する足底パットが歩行の立脚期に及ぼす影響 ̶矢状面上での下腿と大腿傾斜角および膝関節角度に着目して(2010)
【下腿傾斜角 ヒールパット】
▶︎立位での重心動揺測定において hhp (ハーフヒールパット)は重心の左右方向への成分が大きかった。
▶︎下腿傾斜角では hhp は明らかに前方へ傾斜 しており , それにともない重心位置も前方へ移行していると予測された。
▶︎しかし足長に対する踵部からの重心中心位置は有意な 差を認めず , 前額面動揺が有意に認められた。
▶︎これらは hhp 装着時踵骨隆起が押し上げられ , 立方骨は踵骨に対して下制し踵 立方関節は離開する。
▶︎第 5 列は外反し前足部横アーチは下降して支持機能面で開張足様の不安定な骨形態になる
▶︎したがって重心が左右方向へ分散されたと考えられた。
▶︎hhp の下腿傾斜角が他と有意に大きな値を示したことは ,hhp では踵骨隆起が押し上げられ距骨が前方へ傾斜し下腿が前方移動されたと考えられた。
▶︎足部縦アーチが伸張されたこ とにより後脛骨筋や腓骨筋群が伸張され内 ・ 外果が距骨に対して前方に押し出された結果 , 下腿傾斜角が拡大したとも考えられた。
▶︎反対に hp では踵骨粗面に起始部を持つ足底筋膜を押し上げ足部縦アーチを挙上して強固な足部構造となり下腿の前方移動を抑制した。
引用
岡部ら:踵骨部パッドが身体に及ぼす影響についての一考察
—ヒールパッドとハーフヒールパッドの比較検討—(2009)
・まとめ
▶︎文献でもふれられていましたが、下腿傾斜角は膝関節、距腿関節、距骨下関節に関与し、そこから連鎖して前足部にも影響するとのことでした。
▶︎そのため、その他のアライメント評価に加えて、下腿傾斜角はとても重要な評価であると思います!
▶︎調べれば調べるほど、足部周囲は複雑ですが、その分面白いですね!
▶︎少しでも今後の臨床の参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました!😁
※足部についてまとめて知識を得たいあなたは是非こちらをどうぞ↓
足部・足関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く [ 片寄正樹 ]
※足部評価は単一の検査のみでなく、複数の評価をあわせて行うのが有効です。
下記の記事もお時間があればご参照ください↓
【足部評価まとめ】
【leg heel angle(LHA)正常値・測り方は?】
【内側縦アーチ高率(MLA)って何?評価の方法は?】
【Navicular Drop test(NDT)方法や基準値は?】
【足部評価】Arch height index (AHI)って何?
【専門職向け】外側縦アーチについて
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