こんにちは!今回は、パーキンソン病にみられる『すくみ足』の文献を一部抜粋してお伝えします!!
※今回は文献をまとめたのみになりますので、パーキンソン病の簡単な概要をまとめた記事については下記を参照下さい↓
○管理人プロフィール
▶足と靴専門の理学療法士(8年目)。新人教育担当。理学療法士になる前に、足と靴の専門学校にて2年間学んできましたので、足・靴に対する知識は比較的豊富です。
▶実際の靴作りも行っていたので、構造的なこともお伝え出来ます。(ニーズがあるのかは不明)
・すくみ足歩行の文献×3
▶ではさっそく、すくみ足歩行についての文献を、ポイントを絞ってお伝えしていきます!
【文献①】
FOG (すくみ足)の具体的な症状として以下のものが報告されている。
1.地面から足が離れない 2.3 ~ 8Hzの頻度で脚に震えが起きる 3.ステップ長の減少を伴ったケイデンスの増加 4.突然出現し,様々な手がかりによって離脱可能 5.非対称的であり片脚に起こること,多くは方向転換によって比較的容易に誘発されることなどがある(Nutt ら 2011)。
PD 患者における「すくみ」は FOG のよ
うな歩行場面だけでなく,発話,書字,歯磨き動作など他の運動においても認められている。
【歩行障害に対するアプローチ】
【文献①】
PD 患者の歩行障害に対するリハビリテーションとして,音刺激に合わせた歩行練習,トレッドミルを利用するものや,二重課題や反復経頭蓋磁気刺激(r-TMS),経頭蓋直流電気刺激(t-DCS)を併用したものなどがある(Elahi ら 2009,Dagan ら 2018)。
なかでも音刺激や視覚刺激などの外的キューを利用したアプローチはリハビリテーションの主要な構成要素となっている(Spaulding ら 2013)。
聴覚刺激はケイデンス,速度,ストライド長を有意に改善し、
視覚刺激はストライド長のみを有意に改善することが報告されている
聴覚刺激が外的キューとして有効に働く理由は「基底核がリズムを形成できないことに対する代償」(Morris ら 2010)
と説明されることが多い
運動には外部トリガーによって起こる外発性随意運動の系と運動を自発的に起こす内発性随意運動の系がある(岡田 2019,Gazzaniga ら 2009,Pollok ら
2006)
内発性随意運動の系は,基底核,補足運動野,運動前野,前頭前野(背外側前頭前野)
を中心としたネットワークで補足運動野が重要な役割を果たすといわれている。
外発性随意運動の系は運動前野,頭頂葉,小脳,前頭前野を中心としたネットワークである。
PD 患者では小脳と頭頂皮質などの外発性随意運動の系が優位になっており,基底核を中心とした内発性随意運動の系は活動が減弱していることを示唆している。
また,Drucker ら(2019)は足部のタッ
プ運動をさせ脳血流量を観察し,健常者に比べ PD患者では自発運動において小脳の賦活を認めたと報告した。
Harrison ら(2018)は,PD 患者と健常者において,外的キューよりも内的キューのほうが,歩行時のストライド長,ストライド時間,片脚支持時間のばらつきを改善すると報告し,内的リズムアプローチの有用性を示した。
Harrison ら(2018)は,音楽を聴かせてそのリズムに合わせて歩くという外的キューアプローチと,はじめに音楽を聴かせてから音楽を消し,歌を歌わせたまま歩行させる内的キューアプローチを比較するという方法を用いた。
少し奇異な方法であるが,実験で内的リズムを計測する手法としては,被験者にメトロノームなどの外的キューに合わせてリズム運動を継続させて,途中で音を消し,どの程度
正確にメトロノームで与えたリズムを継続することができるかを測定する方法が一般的である(Tolle-son ら 2015)。
【文献②】
安定かつ効率的な歩行を開始するためには予測的姿勢調節 (APA)が必要となるが、PD患者ではAPAの異常が報告されている。
また、PD患者は運動症状の非対称性が存在
し、この非対称性とFOGとの関連も報告されている。
【文献③】シングルケース
症例:ヤールの分類:ステージ4 80台女性
治療内容:治療期間は32日間で理学療法を43単位実施した。
内容は筋力強化練習、関節可動域練習、起居動作練習(四つ這い位、膝立ち位、床からの立ち座りなど含む)、立位バランス練
習、歩行練習を実施した。
軽症PD患者は健常高齢者に比べて左右方向
のAPAsが減少しすくみ足の原因になる可能性が報告されている。
本症例は前後方向のAPAsの変化でバランス機能やすくみ足の改善が認められたことから、症例の重症度などによってすくみ足の原因は異なってくる可能性が考えられた。
【文献③】シングルケース
本症例は,PD による大脳基底核の器質的変性に伴う,大脳皮質-基底核系の機能低下により,自発的なリズム形成能力が低下した結果,手指タッピング維持能力の低下や SSTF が出現している.
治療方針として,視覚・聴覚刺激などの外的刺激ではなく,内発的なリズム調整による内的刺激を用いた自発的なリズム形成能力の向上により,歩行能力の改善を図る.
方法
前後開脚位のつかまり立位をとらせた患者の骨盤を自動介助にて回旋させ,前方への重心移動を促すものとした.
その際,骨盤の回旋を異なる運動時間(1~5 秒)にて各 10 回ずつ行った後,運動時間を事前に提示したうえで,異なる運動時間での同動作をランダムに 10 回行い,各運動時間での運動速度の調整を患者に求めるものとした.
同課題は左右で行うものとした.本介入にお
いては,患者は前方に設置した椅子の背もたれを両上肢でつかみ,セラピストはその椅子に腰掛け,椅子の背もたれを患者との間に挟み,前方から患者の骨盤を操作するものとした.
考 察
今回,PD における SSTF の病態背景に自発的リズム形成能力の低下が関与しているとの病態仮説のもと,同仮説の検証作業として内的リズム形成課題を考案し,SSTF を呈した進行期 PD 患者に実施したところ,症状の軽減が認められた.
本症例では先行研究 と同様に,タッピング継続時間の成績の向上とともに,同一距離間の歩行時における歩数および所要時間の減少と,継続的な日常生活動作能力の向上が認められた.
FOG の病態仮説として,
歩行の認知的制御に関わる「基底核-皮質系」の機能低下
自律的制御に関わる「基底核-脳幹系」との協調性の低下による歩行リズムの破綻が挙げられている
また,PD では自律的動作の再獲得には健常者と比較して多くの認知的制御の動員が必要となることが明らかとなっている .
SSTF の制御に必要な内的リズム形成能力の学習時における患者の認知的負荷の軽減と,「基底核-皮質系」と「基底核-脳幹系」の協調性の適正化に寄与した結果,本症例の歩行能力が向上したものと思われる.
※SSTF:歩行時のすくみ足 ※FOG:すくみ足歩行
・まとめ
→今回は、すくみ足の文献をまとめました!
その他パーキンソン病の記事については下記参照下さい!↓
【文献①】木村.パーキンソン病患者のすくみ足における内的リズム形成障害と遂行機能の関連.高次脳機能研究.2020 年 40 巻 3 号 p. 348-353
【文献②】永井ら.パーキンソン病患者の歩行開始動作における予測的姿勢調節とすくみ足との関連について.Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集).2019
【文献③】村部.内的リズム形成課題により歩行継続時のすくみ足歩行の改善を示した進行期パーキンソン病患者の一症例─介入内容の減少にもかかわらず改善を認めた 治療経過の報告としての第2報─.理学療法科学.2019 年 34 巻 5 号 p. 723-727
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